Web制作の仕事では、デザインやコーディング、ライティングなどを他のフリーランスへ依頼することがあります。その際、「支払った報酬は経費になる?」「勘定科目は何を使う?」「源泉徴収は必要?」と迷う方も多いでしょう。この記事では、外注した費用の経費計上や仕訳、源泉徴収の考え方について、個人事業主・フリーランス向けにわかりやすく解説します。
- 外注した費用を経費にできる条件
- 外注費に使う勘定科目の考え方
- 外注費を支払ったときの仕訳方法
- 源泉徴収が必要になるケース
- 経費計上する際に注意したいポイント
監修
大石 英樹(おおいし ひでき)
かいせい税理士法人 代表
大阪市淀川区を拠点に、フリーランス・個人事業主から法人まで幅広い税務顧問を手がける。豊富な実務経験と機動力を武器に、確定申告・記帳・資金調達・事業承継まで一貫してサポート。「経営者の良きパートナー」をモットーに、わかりやすい税務アドバイスを提供している。

外注した費用は経費として計上できる?
結論からいうと、事業に必要な業務を外部へ依頼して支払った費用は、原則として必要経費に計上できます。
所得税では、売上を得るために直接必要となった費用や、その年に生じた業務上の費用などが必要経費になります。
たとえば、Webデザイナーが30万円でサイト制作を受注し、その案件のコーディングを別のエンジニアへ8万円で依頼した場合です。8万円は売上を得るために必要な支出であるため、原則として経費にできます。
ほかにも、ライターへの記事作成費、デザイナーへのバナー制作費、イラストレーターへの制作費などが考えられます。
ただし、外部の人へ支払った費用なら何でも経費になるわけではありません。プライベートな依頼など、事業と関係のない支出は経費にできません。
「誰に支払ったか」ではなく、事業のために必要な支出だったと説明できるかが重要です。
どの勘定科目を使えばいい?

結論として、事業で行う業務の一部を外部へ委託した場合は、「外注工賃」などの勘定科目で処理する方法があります。
たとえば、自分が受注したサイト制作のコーディングをエンジニアへ依頼した場合や、デザイン部分を別のデザイナーへ依頼した場合などです。
一方、振込手数料など、制作業務そのものの委託とは性質が異なる支出は「支払手数料」などで処理することがあります。
大切なのは、帳簿を見たときに「何のために支払った費用なのか」が分かることです。また、同じ種類の取引を毎回異なる勘定科目で処理すると、年間の外注費を把握しにくくなります。
一度処理方法を決めたら、同じ性質の取引は継続して同じ基準で記帳するようにしましょう。
支払い時の仕訳はどうすればいい?
結論として、外注費は費用が発生した時期と支払方法に応じて仕訳します。
たとえば、源泉徴収が不要な外注費10万円を普通預金から支払った場合は、次のように仕訳できます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 外注工賃 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 |
一方、12月に業務が完了して10万円の支払義務が確定し、翌年1月に支払う場合は、12月に次のように処理する方法があります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 外注工賃 | 100,000円 | 未払金 | 100,000円 |
翌年1月に振り込んだときは「未払金100,000円/普通預金100,000円」と処理します。
所得税の必要経費は、原則として単純にお金を支払った日だけで判断するのではなく、その年に債務が確定した金額を計上します。
特に年末前後の外注費は、計上する年を間違えないよう注意しましょう。
源泉徴収が必要になるのはどんなケース?
結論からいうと、外注費だからといって、すべての支払いで源泉徴収が必要になるわけではありません。
確認すべきなのは、「支払う側が源泉徴収義務者に該当するか」と「支払う報酬が源泉徴収の対象か」の2点です。
個人へ支払う原稿料や一定のデザイン報酬などは、源泉徴収の対象になる場合があります。そのため、Web制作に関する支払いでも「Web制作費」「外注費」といった請求書の名称だけではなく、実際にどのような業務を依頼したのかを確認する必要があります。
一方、個人事業主が支払う場合には注意点があります。報酬を支払う人が個人で、給与等の支払者ではない場合は、原則として一定の報酬・料金について源泉徴収する必要はありません。
反対に、給与等を支払っている個人事業主などが源泉徴収対象の報酬を支払う場合は、源泉徴収が必要になることがあります。
また、請求書などで報酬額と消費税額が明確に区分されている場合は、報酬部分のみを源泉徴収の対象として取り扱えるケースがあります。
源泉徴収は条件によって取り扱いが変わるため、「フリーランスへの外注だから」という理由だけで判断しないことが大切です。
経費計上するときに注意すべきことは?

結論として、取引内容を証明できる資料を残し、所得税と消費税のルールを混同しないことが重要です。
請求書だけでなく、契約書、発注書、メールやチャット、振込記録なども保存しておくと、「誰に・何を・いくらで依頼したのか」を説明しやすくなります。
また、消費税の課税事業者はインボイス制度にも注意が必要です。原則として仕入税額控除を受けるためには、一定の要件を満たした帳簿や適格請求書等を保存する必要があります。
ただし、インボイスを発行できない相手への支払いだから、所得税の必要経費にできないというわけではありません。所得税上の必要経費と、消費税上の仕入税額控除は別のルールです。
免税事業者等からの課税仕入れには経過措置も設けられており、適用時期によって取り扱いが変わります。制度改正の影響を受ける部分でもあるため、実際に消費税を申告する際は最新情報を確認しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. フリーランスに仕事を依頼した費用は経費になりますか?
事業に必要な業務を依頼した費用であれば、原則として必要経費にできます。デザインやコーディング、記事制作など、売上を得るために必要な外注が代表例です。
Q. 外注費はすべて「外注工賃」にすればいいですか?
必ず「外注工賃」でなければならないわけではありません。支出の内容が分かる勘定科目を選び、同じ性質の取引では継続して同じ基準で処理しましょう。
Q. デザイナーへの報酬は源泉徴収が必要ですか?
デザイン報酬は源泉徴収の対象になる場合がありますが、支払う側が源泉徴収義務者に該当するかどうかも確認する必要があります。支払者の状況と実際の業務内容の両方から判断しましょう。
Q. コーディングを依頼した場合も源泉徴収が必要ですか?
「コーディング」という名称だけで一律に判断するのではなく、実際の業務内容を確認します。デザインなど源泉徴収の対象となり得る業務をまとめて依頼している場合は、契約内容や報酬の内訳にも注意が必要です。
まとめ
Web制作でデザインやコーディングなどを外部へ依頼した費用は、事業に必要な支出であれば原則として必要経費にできます。
勘定科目は「外注工賃」などを使用する方法がありますが、大切なのは取引の実態に合った科目を選び、継続した基準で記帳することです。
また、原稿料やデザイン報酬などは源泉徴収の対象になる場合があります。ただし、報酬の内容だけでなく、支払う側が源泉徴収義務者に該当するかどうかも確認しましょう。
外注先が増えると、仕訳だけでなく請求書の管理、源泉徴収、インボイス制度への対応など確認事項も増えます。取引が発生した段階から帳簿と証拠書類を整理しておくことが大切です。
外注費の記帳や源泉徴収に迷ったら記帳代行アクリーに相談しよう
Web制作の案件が増えると、デザイナーやエンジニア、ライターへの支払いも増え、「この支払いはどの勘定科目?」「いつ経費に計上する?」といった経理上の確認に時間を取られやすくなります。
制作や営業に集中したいのに、請求書の整理や帳簿付けが後回しになっている方もいるでしょう。
こうした日々の記帳業務に負担を感じている場合は、記帳代行アクリーを活用して記帳を外部へ任せる方法もあります。
外注先や取引件数が増えるほど、正確な帳簿管理の重要性も高まります。経理作業に使う時間を減らし、Web制作や営業など本来の仕事に集中したい方は、記帳代行の活用を検討してみましょう。


