Web制作では、納品日・検収日・請求書発行日・入金日が異なることがあります。そのため、「請求書を発行した日と入金日のどちらで売上を計上するの?」と迷う方も多いでしょう。原則として、売上を計上するのは入金日ではなく、制作物を引き渡して報酬を受け取る権利が確定した日です。本記事では、Web制作の売上計上と仕訳方法を具体例とともに解説します。
- Web制作の売上を計上するタイミング
- 請求書発行時と入金時の仕訳方法
- 着手金や分割払いを受けた場合の処理
- 源泉徴収や振込手数料がある場合の考え方
- 年をまたぐ案件で注意すべきポイント
監修
大石 英樹(おおいし ひでき)
かいせい税理士法人 代表
大阪市淀川区を拠点に、フリーランス・個人事業主から法人まで幅広い税務顧問を手がける。豊富な実務経験と機動力を武器に、確定申告・記帳・資金調達・事業承継まで一貫してサポート。「経営者の良きパートナー」をモットーに、わかりやすい税務アドバイスを提供している。

Web制作の売上はいつ計上する?
Web制作の売上は、原則として制作物を納品し、契約上の役務提供が完了した日に計上します。
個人事業主の事業所得では、代金を受け取った日ではなく、報酬を受け取る権利が確定した日を基準に収入を計上するのが基本です。請負契約の場合、目的物の引き渡しが必要な取引は引き渡した日、引き渡しを必要としない取引は役務提供を完了した日が収入時期とされています。
Web制作では、契約内容に応じて次のような日が売上計上日の候補になります。
- Webサイトやデザインデータを納品した日
- クライアントの検収が完了した日
- Webサイトを公開して作業が完了した日
- 契約書で定められた業務完了日
例えば、12月25日にWebサイトを納品し、翌年1月10日に請求書を発行、1月31日に入金されたとします。12月25日の納品によって報酬請求権が確定していれば、原則として12月25日の売上です。
ただし、契約上「検収完了をもって納品とする」と定めている場合は、検収日が基準になることがあります。修正作業が残っているケースもあるため、納品日だけで一律に判断せず、契約書や発注書の条件を確認しましょう。
請求書を発行したときはどの勘定科目で仕訳する?

代金が後日入金される場合は、通常「売掛金」と「売上高」を使って仕訳します。
売掛金とは、すでに仕事を完了しているものの、まだ受け取っていない代金を表す勘定科目です。
例えば、55万円のWebサイトを納品し、報酬請求権が確定した場合は、次のように仕訳します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 550,000円 | 売上高 | 550,000円 |
請求書を納品日に発行した場合は、請求書発行日と売上計上日が一致します。一方、納品後に請求書を発行した場合でも、売上計上日は請求書発行日ではなく、原則として納品などにより報酬請求権が確定した日です。
反対に、制作開始前に請求書を発行しても、請求書を作成しただけで直ちに売上になるとは限りません。請求書の日付だけで判断せず、契約書、納品書、検収書、納品メールなども保存しておきましょう。
取引先から入金されたときの仕訳はどうする?
取引先から代金が入金されたときは、売上を再度計上せず、計上済みの売掛金を減らします。
55万円が普通預金へ振り込まれた場合の仕訳は、次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 550,000円 | 売掛金 | 550,000円 |
請求時と入金時の両方で「売上高」を使うと、売上が二重に計上されるため注意してください。
振込手数料440円が差し引かれ、54万9,560円だけ入金された場合は、契約内容や経理方針に応じて、次のように処理する方法があります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 549,560円 | 売掛金 | 550,000円 |
| 支払手数料 | 440円 |
ただし、消費税の課税事業者が取引先負担分の振込手数料を実質的に値引きしている場合、消費税上は「売上げに係る対価の返還等」として扱う方法もあります。インボイス制度における帳簿の記載方法にも関係するため、継続して同じ処理を行いましょう。
また、Webデザインなどの報酬は、支払者や業務内容によって源泉徴収の対象になることがあります。国税庁は「デザインの報酬」を源泉徴収の対象に含めていますが、コーディングやシステム開発の報酬が一律に対象になるわけではありません。
源泉所得税が差し引かれた場合も、売上は差引前の報酬額で計上します。個人事業主であれば、差し引かれた金額は一般的に「事業主貸」などで処理し、確定申告で納付税額から精算します。
着手金・分割払い・キャンセル料はいつ売上に計上する?

着手金や分割払いは、入金日だけで判断せず、契約上いつ報酬が確定するかを確認します。
制作前に受け取った着手金が完成後の制作代金に充当される場合は、受取時点では「前受金」とするのが一般的です。
着手金11万円が入金された場合は、次のように仕訳します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 110,000円 | 前受金 | 110,000円 |
その後、総額55万円のWebサイトを納品した場合は、前受金を売上へ振り替え、未入金の44万円を売掛金として計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前受金 | 110,000円 | 売上高 | 550,000円 |
| 売掛金 | 440,000円 |
単に支払いだけを分割する契約では、入金のたびに売上を計上するとは限りません。Webサイト全体を一度に納品する契約であれば、原則として納品時に総額を売上計上します。
一方、「トップページ完成時に30%」「下層ページ完成時に40%」「公開時に30%」のように、工程ごとの納品と報酬額が契約で明確に定められている場合は、各工程が完了した時点で対応する売上を計上することがあります。
キャンセル料は、契約に基づいて金額を請求できることが確定した日に計上します。すでに行った制作作業の対価であれば「売上高」、損害補償としての性質が強ければ「雑収入」など、契約内容と実態に合わせて判断しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 12月に納品し、翌年1月に入金された場合は何年分の売上ですか?
12月中に納品や検収が完了し、報酬請求権が確定していれば、原則として12月を含む年の売上です。翌年の入金時には「普通預金/売掛金」と仕訳します。
Q. 請求書を発行していなければ売上を計上しなくてもよいですか?
請求書を発行していなくても、業務が完了して報酬を受け取る権利が確定していれば、売上計上が必要です。請求書の有無だけで判断してはいけません。
Q. 入金日に売上を計上する方法は使えますか?
一定の小規模な青色申告者は、事前に届出をすることで現金主義の特例を利用できる場合があります。対象は原則として、前々年分の事業所得と不動産所得の金額の合計が300万円以下の人です。なお、この特例を選択すると、55万円または65万円の青色申告特別控除は利用できません。
Q. 納品日と検収日が違う場合はどちらで計上しますか?
契約で検収完了を報酬確定の条件としている場合は、検収日が売上計上日になることがあります。ただし、契約条件や取引実態によって判断が異なるため、契約書や検収記録を確認しましょう。
まとめ
Web制作の売上は、原則として入金日ではなく、納品や検収が完了して報酬を受け取る権利が確定した日に計上します。
後日入金される取引では、売上計上時に「売掛金/売上高」、入金時に「普通預金/売掛金」と仕訳するのが基本です。制作前に受け取った着手金は、すぐに売上とせず「前受金」として処理する場合があります。
特に年末の案件は、納品と入金が年をまたぎやすいため注意が必要です。契約書、請求書、納品書、検収書、メールなどを保存し、売上計上日の根拠を説明できるようにしておきましょう。
Web制作の売上管理に悩んだら記帳代行アクリーを活用しよう
Web制作では、案件ごとに納品条件や支払い方法が異なり、着手金、分割払い、源泉徴収などの処理が発生することもあります。制作業務が忙しくなるほど、売掛金の確認や仕訳入力が後回しになりがちです。
記帳代行アクリーを活用すれば、請求書や領収書などをもとに日々の記帳作業を任せられます。経理の負担を減らすことで、本来の制作業務や顧客対応に集中しやすくなるでしょう。
「売上を計上する日がわからない」「会計ソフトへの入力がたまっている」というWeb制作者は、記帳業務を外部へ任せることも選択肢の一つです。契約内容によって処理が変わる取引については、必要に応じて税理士や所轄税務署にも確認しましょう。


