物販やせどりの売上が伸びてくると、「個人事業主のままでいいのか」「法人化したほうが得なのか」と迷う方も多いでしょう。法人化には税金や事業拡大の面でメリットが期待できる一方、社会保険や経理の負担が増える場合もあります。この記事では、個人事業主と法人の違いから、法人化を検討するタイミングまで初心者向けにわかりやすく解説します。
- 物販における個人事業主と法人の違い
- 物販を始めるときにどちらを選ぶべきか
- 法人化するメリット・デメリット
- 物販で法人化を検討するタイミング
監修
大石 英樹(おおいし ひでき)
かいせい税理士法人 代表
大阪市淀川区を拠点に、フリーランス・個人事業主から法人まで幅広い税務顧問を手がける。豊富な実務経験と機動力を武器に、確定申告・記帳・資金調達・事業承継まで一貫してサポート。「経営者の良きパートナー」をモットーに、わかりやすい税務アドバイスを提供している。

物販では個人事業主と法人で何が違う?
個人事業主と法人では、主に税金の仕組み・社会保険・設立手続き・経理の負担が異なります。
個人事業主で物販による所得が事業所得に該当する場合、その所得には所得税などがかかります。所得税は所得が増えるほど税率が高くなる累進課税で、2026年分は5%〜45%の7段階です。
一方、法人では会社の所得に法人税などがかかります。一定の中小法人には法人税の軽減税率がありますが、法人住民税や法人事業税などもあるため、所得税率と法人税率だけを比べて「法人のほうが得」と判断することはできません。
また、法人は設立手続きに加えて、毎期の決算や法人税申告などが必要です。個人事業主より経理・税務が複雑になりやすいため、税負担だけでなく事務コストまで含めて比較しましょう。
物販を始めるなら個人事業主と法人のどちらが向いている?

副業や小規模な物販から始めるなら、まず個人事業主としてスタートする方法が取り組みやすいでしょう。
個人事業主は法人に比べて事業開始時の手続きやコストを抑えやすく、利益がまだ安定していない段階でも始めやすいためです。
例えば、会社員が副業としてAmazonや楽天、メルカリなどで販売を始めたばかりの場合、最初から法人化すると、決算や税務申告などの負担が事業規模に対して大きくなることがあります。
また、株式会社などの法人事業所は、事業主のみの場合を含めて原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。法人化では社会保険の負担も考慮する必要があります。
まず個人事業主として利益を安定させ、その後、法人化した場合の税金や社会保険料を比較するのも一つの方法です。ただし、最初から大規模な仕入れや融資、法人名義での取引を予定している場合は、事業開始時から法人を選ぶケースもあります。
個人事業主から法人化するとどんなメリット・デメリットがある?
法人化には事業を拡大しやすくなるメリットがある一方、設立後の固定的な負担が増えるデメリットがあります。
物販の利益が大きくなれば、個人事業主として所得税などを負担する場合と、法人化して法人側の税金や役員報酬にかかる税金を負担する場合を比較する余地が生まれます。
また、法人名義で契約できるため、仕入先との取引や融資、倉庫の契約、従業員の採用など、事業を拡大する場面で法人化が適しているケースがあります。
例えば、一人で行っていたせどりから仕入れ量を増やし、倉庫を借りてスタッフを雇う段階になれば、法人化を具体的に検討する価値が高まります。
一方で、法人化すると決算や法人税申告、役員報酬の管理などが必要です。加えて、法人事業所では原則として社会保険への加入手続きも必要になるため、会社負担分の保険料も資金計画に含めなければなりません。
そのため、「法人化すれば必ず節税できる」とは限りません。 法人化前後の税金だけでなく、社会保険料や経理コストまで含めた手取り額で比較することが重要です。
物販で法人化を検討するタイミングはいつ?

法人化は売上だけでなく、利益が継続的に出ているかを基準の一つとして判断しましょう。
物販では同じ売上でも、仕入原価や販売手数料、送料、広告費などによって利益が大きく異なります。そのため、「売上が○万円になったら法人化」という一律の基準はありません。
例えば年間売上が3,000万円あっても、仕入れや販売手数料が大きければ利益は少ない可能性があります。反対に、売上規模がそれほど大きくなくても、利益率が高く安定した利益を確保できていれば法人化を比較する価値があります。
法人化を検討するきっかけとしては、利益が継続的に増えている、融資を活用して仕入れを拡大したい、従業員を採用したい、法人名義での取引を増やしたいといったケースが挙げられます。
なお、「法人を設立すれば消費税が必ず免税になる」と考えるのは危険です。 新設法人の第1期・第2期は基準期間がないため原則として免税となりますが、資本金など一定の要件に該当すると免税にならない場合があります。また、インボイス発行事業者として登録した場合にも消費税の申告・納税が必要となる場合があります。
法人化する前に、税理士などの専門家にも相談しながら、個人事業主を続けた場合と法人化した場合を具体的に試算すると安心です。
よくある質問(FAQ)
Q. 物販の売上が1,000万円を超えたら法人化したほうがいいですか?
必ずしも法人化する必要はありません。1,000万円という金額は、消費税の納税義務を判定する際の基準の一つであり、法人化そのものの基準ではありません。消費税は原則として基準期間の課税売上高などをもとに判定するため、売上だけで法人化を決めないようにしましょう。
Q. 法人化すれば必ず節税できますか?
いいえ。法人化すると法人側の税金だけでなく、役員報酬にかかる所得税や社会保険料、決算・申告にかかるコストなども発生します。法人化前後の手取り額を比較して判断することが重要です。
Q. 個人事業主から途中で法人化できますか?
できます。個人事業主として物販を始め、事業が成長してから法人を設立することも可能です。ただし、法人化するときは商品在庫や事業用資産、契約などを法人へどのように引き継ぐかも確認する必要があります。
まとめ
物販を始めたばかりなら個人事業主、利益が安定して事業拡大を考える段階になったら法人化を比較検討するのが一つの考え方です。
個人事業主は比較的スタートしやすい一方、法人化すると事業拡大に適した場面が増える可能性があります。ただし、社会保険や決算、法人税申告などの負担も増えるため、法人化が必ず有利とは限りません。
特に物販では「売上」だけを見るのではなく、仕入れや販売手数料などを差し引いて実際にいくら利益が残っているのかを正確に把握することが大切です。
物販の売上が伸びて経理が複雑になったら記帳代行アクリーに相談しよう
法人化を検討するためにも、まずは毎月の売上・経費・利益を正確に把握できる状態をつくることが大切です。
物販では、商品の仕入れ、販売手数料、送料、梱包資材、広告費など多くの取引が発生します。販売件数が増えるほど帳簿付けの負担も大きくなり、「売上は把握しているけれど、本当の利益がわからない」という状態になりがちです。
そのような場合は、記帳代行アクリーの活用も選択肢です。
日々の記帳を整理して事業の数字を把握できれば、法人化を検討するときにも判断材料をそろえやすくなります。経理作業の負担を減らし、仕入れや販売、商品リサーチなど本来の業務に集中したい方は、記帳代行の利用を検討してみましょう。


