飲食店を経営していると、食材や飲料の仕入れが日々発生します。「食材は何の勘定科目にすればいい?」「クレジットカードで支払った場合はどう仕訳する?」と迷う方も多いでしょう。仕入れの処理を間違えると、正確な利益を把握できず、確定申告にも影響する可能性があります。この記事では、飲食店の仕入れに使う勘定科目や具体的な仕訳例、記帳時の注意点を初心者向けに解説します。
- 飲食店の仕入れに使う勘定科目
- 食材・飲料を購入したときの仕訳方法
- 現金・クレジットカード・掛け払いの仕訳の違い
- 仕入れと消耗品費を区別する考え方
- 仕入れを記帳するときの注意点
監修
大石 英樹(おおいし ひでき)
かいせい税理士法人 代表
大阪市淀川区を拠点に、フリーランス・個人事業主から法人まで幅広い税務顧問を手がける。豊富な実務経験と機動力を武器に、確定申告・記帳・資金調達・事業承継まで一貫してサポート。「経営者の良きパートナー」をモットーに、わかりやすい税務アドバイスを提供している。

飲食店の仕入れにはどの勘定科目を使う?
飲食店がお客様に料理やドリンクとして提供するために購入した食材・飲料は、一般的に「仕入高(仕入)」で処理します。
仕入とは、販売する商品や、その商品を作るための原材料などを購入した際に使用する勘定科目です。飲食店であれば、料理を作るための食材や提供用の飲料などが該当します。
たとえば、次のようなものです。
- 肉・魚・野菜・米などの食材
- 料理に使用する調味料
- 提供・販売するソフトドリンク
- 提供・販売する酒類
- 販売用のデザートや食品
一方、店舗で使用するものでも、すべてを仕入として処理するわけではありません。
たとえば、厨房を掃除するための洗剤やスポンジ、事務作業に使う文房具などは、販売する料理や商品の原材料ではないため、一般的には「消耗品費」など用途に応じた勘定科目で処理します。
勘定科目を判断するときは、「何を買ったか」だけではなく「何の目的で使用するのか」を確認することが大切です。
食材や飲料を仕入れたときはどう仕訳する?

食材や飲料を仕入れた場合は、購入代金を「仕入」として記帳するのが一般的です。
たとえば、店舗で提供する料理の食材10,000円分を現金で購入した場合、仕訳例は次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 |
この仕訳は、「仕入」が10,000円増え、手元の「現金」が10,000円減ったことを表しています。
ただし、購入した食材をそのまま当期の売上原価として確定できるとは限りません。
決算日・年末時点で未使用の食材や販売前の商品が残っている場合には、棚卸を行い、期末に残っている棚卸資産の金額を把握します。
一般的な売上原価は、次の考え方で計算します。
売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 − 期末棚卸高
たとえば、年末に未使用の食材が残っていれば、その在庫を適切に棚卸する必要があります。
飲食店では食材の回転が速く、在庫管理を後回しにしやすいため、仕入れの記帳だけでなく期末の棚卸にも注意しましょう。
現金・クレジットカード・掛け払いでは仕訳がどう変わる?
仕入れるものが同じでも、現金・クレジットカード・掛け払いなど、支払方法によって貸方の勘定科目が変わります。
まず、10,000円分の食材を現金で購入した場合は次のように仕訳します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 |
事業用クレジットカードで購入し、代金が後日事業用口座から引き落とされる場合は、購入時に「未払金」を使う方法があります。
購入時
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 10,000円 | 未払金 | 10,000円 |
口座から引き落とされたとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払金 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 |
一方、仕入先との取引で商品や食材を先に受け取り、代金を後日支払う通常の掛け仕入れでは、「買掛金」を使用するのが一般的です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 10,000円 | 買掛金 | 10,000円 |
後日、事業用口座から代金を支払った場合は、買掛金を減らします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 |
なお、個人用のクレジットカードや個人口座で事業用の仕入れを支払った場合は、個人事業主では「事業主借」を使用するケースがあります。
実際の処理方法は取引状況や会計処理の方法によって異なる場合があるため、継続して同じルールで記帳することも重要です。
仕入れと消耗品費はどうやって区別する?

仕入と消耗品費を区別するときは、「販売する商品そのもの、または料理など販売する商品の原材料として使用するか」を一つの基準にするとわかりやすくなります。
たとえば、料理に使用する肉・魚・野菜・調味料などは、基本的に仕入として処理します。
一方、次のような店舗運営のために消費するものは、一般的に消耗品費などで処理します。
- 清掃用の洗剤やスポンジ
- ゴミ袋
- 文房具
- 安価な調理用品
- 店舗運営に使用する各種消耗品
判断に迷いやすいのが、テイクアウト用の容器や割り箸、紙ナプキンなどです。
これらは商品の販売に直接付随するため仕入などとして管理するケースもあれば、消耗品費などで処理するケースもあります。取引の実態や店舗の会計方針、重要性などを踏まえて適切な科目を選ぶ必要があります。
勘定科目の名称そのものだけで税額が決まるわけではありませんが、同じ性質の取引について合理的な理由なく処理方法を頻繁に変更すると、経営状況を比較しにくくなります。
一度合理的な基準を決めたら、継続して同じ基準で処理しましょう。
仕入れを記帳するときに注意すべきポイントは?
飲食店の仕入れを記帳するときは、事業用とプライベート用を明確に区分し、取引内容を確認できる証憑を適切に保存することが重要です。
特に個人事業主の場合、スーパーやネットショップなどで店舗用の商品と私物を一緒に購入するケースがあります。
たとえば、スーパーで店舗用食材8,000円、自宅用食品2,000円を一緒に購入したとします。
この場合、合計10,000円をすべて仕入として計上するのではなく、店舗用の8,000円のみを事業上の仕入として処理します。
また、領収書やレシートだけでなく、請求書、クレジットカード明細、銀行口座の入出金履歴なども取引を確認する重要な資料になります。
帳簿や請求書・領収書などには、税法上それぞれ保存義務があります。さらに、電子メールやWebサービスなどを通じて電子データで受け取った請求書・領収書等については、電子帳簿保存法に基づく電子取引データの保存ルールにも注意が必要です。
消費税の課税事業者が仕入税額控除を受ける場合には、帳簿や適格請求書等の保存など一定の要件も関係します。
制度や事業者の状況によって必要な対応は異なるため、「レシートさえ残しておけばよい」と考えず、必要な証憑を整理して保存しておきましょう。
飲食店の仕入れに関するよくある質問(FAQ)
Q. スーパーで購入した食材も仕入にできますか?
店舗で提供する料理や販売する商品のために購入した食材であれば、スーパーで購入したものでも基本的に仕入として処理できます。
ただし、自宅用の商品を一緒に購入した場合は、事業用とプライベート用を区分し、事業に使用する部分のみを記帳しましょう。
Q. お酒の購入代金は仕入になりますか?
店舗でお客様に提供・販売するために購入した酒類であれば、一般的には仕入として処理します。
一方、事業主が個人的に飲むために購入した酒類は、事業上の仕入にはできません。店舗用と個人用を明確に分けて管理することが大切です。
Q. 食材を大量に購入したら全額を仕入にできますか?
購入時に仕入として記帳する方法が一般的ですが、決算日・年末時点で未使用の食材や未販売の商品が残っている場合は、棚卸を行って期末棚卸高を把握する必要があります。
そのため、「年末に大量購入すれば購入額をすべてその年の売上原価にできる」と単純に考えることはできません。
Q. レシートがあれば必ず仕入として認められますか?
レシートを持っているだけで、必ず事業上の仕入として認められるわけではありません。
重要なのは、その支出が事業に関連するものであることです。何を購入し、事業でどのように使用したのか説明できるよう、レシートや領収書などを適切に保存しておきましょう。
また、消費税の仕入税額控除については、所得税の必要経費とは別の要件があるため注意が必要です。
まとめ
飲食店でお客様に提供する料理やドリンクのために購入した食材・飲料は、一般的に「仕入」として記帳します。
一方、洗剤や文房具など店舗運営のために使用するものは、消耗品費など別の勘定科目で処理するのが一般的です。購入したものではなく、「何のために使用するのか」を基準に考えると判断しやすくなります。
また、現金・クレジットカード・掛け払いなど支払方法によって仕訳も変わります。さらに、決算日・年末に食材や商品が残っている場合には棚卸も必要です。
日頃から仕入れを正しく記帳し、領収書や請求書などを整理しておけば、確定申告の負担軽減だけでなく、原価や利益を把握しやすくなります。
仕入れの記帳や経理作業に手が回らないなら記帳代行アクリー
飲食店では、食材の仕入れだけでなく、毎日の売上、現金、クレジットカードやQRコード決済、経費、請求書など多くの取引が発生します。
営業や仕込み、接客に時間を取られるなか、「レシートがたまってしまう」「どの勘定科目を使えばいいかわからない」「記帳する時間を確保できない」と悩む個人事業主も少なくありません。
こうした場合は、記帳業務を外部に任せることも選択肢の一つです。
記帳代行アクリーを活用することで、日々の記帳にかかる作業負担を減らし、店舗運営や商品開発、集客など本業に時間を使いやすくなります。
仕入れや経費の取引が多く、毎月の記帳に負担を感じている飲食店の方は、自分ですべての経理作業を抱え込まず、記帳代行サービスの活用を検討してみてください。


