YouTubeやInstagram、TikTok、Xなどで収益が発生すると、「普段使っている銀行口座のままで大丈夫?」「事業用の口座を作った方がいい?」と悩む方も多いでしょう。事業用口座の開設自体は税務上の必須条件ではありませんが、SNS収益と生活費を分けると、売上管理や記帳、確定申告が格段にしやすくなります。この記事では、インフルエンサーが事業用口座を持つメリットや選び方、利用時の注意点をわかりやすく解説します。
- インフルエンサーに事業用口座が必要なのか
- SNS収益と生活費を分けるメリット
- 事業用口座を選ぶときのポイント
- 事業用口座を使う際の注意点
- SNS収益の記帳を効率化する方法
監修
大石 英樹(おおいし ひでき)
かいせい税理士法人 代表
大阪市淀川区を拠点に、フリーランス・個人事業主から法人まで幅広い税務顧問を手がける。豊富な実務経験と機動力を武器に、確定申告・記帳・資金調達・事業承継まで一貫してサポート。「経営者の良きパートナー」をモットーに、わかりやすい税務アドバイスを提供している。

インフルエンサーは事業用口座を作るべき?
結論からいうと、SNSで継続的に収益を得ているなら、事業専用として使う銀行口座を用意するのがおすすめです。
税務上、個人事業主だからといって必ず「事業用口座」という名称の口座を開設しなければならないわけではありません。個人名義の口座でSNS収益を受け取っていても、収入や経費を適切に把握・記帳できれば申告できます。
ただし、生活費と事業のお金が同じ口座に混在すると、経理作業が複雑になります。
たとえば、1つの口座に以下の取引が並んでいる状態です。
- YouTubeの広告収入
- Instagramの企業案件報酬
- アフィリエイト報酬
- 動画編集ソフトの利用料
- スーパーでの買い物
- 家賃や個人的なクレジットカード代金
この状態では、記帳するときに「事業の取引か、プライベートの取引か」を一件ずつ確認しなければなりません。
事業所得がある場合、日々の収入や必要経費などを記帳し、帳簿や関係書類を一定期間保存する必要があります。白色申告でも記帳・保存制度の対象です。
そのため、SNS活動に関する入出金を1つの口座に集約しておくと、確定申告までの経理がシンプルになります。
SNS収益と生活費を分けるメリットは?

最大のメリットは、事業で「いくら入り、いくら出て、いくら残っているのか」が把握しやすくなることです。
SNS収益と生活費を同じ口座で管理していると、口座残高が100万円あっても、そのすべてを自由に使えるとは限りません。
たとえばSNSから月50万円の売上があっても、そこから動画編集ソフト代、撮影機材代、外注費などを支払い、さらに所得税や住民税などの支払いにも備える必要があります。
そこで、
- SNSの売上 → 事業用口座へ入金
- 事業に必要な支払い → 事業用口座から支出
- 生活費 → 必要額だけ個人用口座へ移す
というルールを作っておくと、お金の流れを把握しやすくなります。
また、事業用口座を会計ソフトと連携できれば、入出金データを取り込み、記帳作業を効率化できる場合があります。プライベート取引がほとんど入っていなければ、取引内容の確認もしやすくなるでしょう。
ただし、口座を分けるだけで節税になるわけではありません。
事業用口座を持つ目的は、売上や経費を正確に管理し、記帳漏れや経費の見落としを減らすことです。結果として、確定申告を正確かつ効率的に進めやすくなります。
事業用口座を作るならどんな口座を選べばいい?
事業用口座は、経理のしやすさと利用コストを基準に選ぶのがおすすめです。
インフルエンサーの場合、企業案件や広告収入などオンライン上で取引が完結するケースも多いため、インターネットバンキングを利用しやすい銀行は相性がよいでしょう。
口座を選ぶ際は、主に次のポイントを確認します。
- 振込手数料やATM手数料
- インターネットバンキングの使いやすさ
- 利用している会計ソフトとの連携可否
- 入出金明細を確認・保存できる期間
- 屋号付き口座への対応
- 振込先として取引先に提示しやすいか
なお、必ずしも屋号付き口座を作る必要はありません。
個人名義で新しい銀行口座を開設し、その口座をSNS事業専用として使う方法でも、生活費と事業資金を分ける目的は達成できます。ただし、銀行によって口座の利用条件は異なるため、事業目的で利用できるかは各金融機関の規約を確認しましょう。
YouTube、Instagram、アフィリエイト、企業案件など複数の収入源があっても、最初から媒体ごとに口座を分ける必要はありません。まずは事業用口座を1つ決め、帳簿上で収入の内容を分けて管理するとシンプルです。
事業用口座を使うときに注意することは?

事業用口座を作ったら、できるだけプライベートな取引を混ぜないことが重要です。
せっかく口座を分けても、個人的な買い物や旅行代、日常の飲食費などを頻繁に事業用口座から支払えば、記帳のたびに取引を仕分ける必要が生じます。
個人事業主の場合、事業のお金を個人的な生活費などに使ったときは、帳簿上「事業主貸」で処理するのが一般的です。
反対に、個人のお金で事業の経費を立て替えた場合には、「事業主借」で処理する方法があります。
たとえば、個人用クレジットカードで事業に必要な動画編集ソフト代1万円を支払ったとしても、その支出が事業上必要なものであれば、個人用カードを使ったという理由だけで経費にできなくなるわけではありません。
ただし、事業用と個人用の支払いが頻繁に混ざるほど記帳は複雑になります。可能であれば銀行口座だけでなく、クレジットカードなどの決済手段も事業用と個人用で分けると管理しやすくなります。
また、帳簿だけでなく請求書や領収書などの証拠書類も保存が必要です。青色申告では帳簿は原則7年間、書類は種類によって5年または7年の保存が求められます。白色申告でも、法定帳簿は7年間、その他の帳簿や一定の書類は5年間の保存が必要です。
さらに、メールで受け取った請求書やWebサイトからダウンロードした領収書など、電子取引で受領した取引情報については、電子データの保存が必要になる点にも注意しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 個人口座でも確定申告できますか?
はい。事業専用口座でなければ確定申告できないというものではありません。重要なのは、SNS収益や必要経費を正しく把握し、必要な帳簿・書類を保存することです。
Q. 副業でSNS収益を得ているだけでも口座を分けた方がいいですか?
収益や取引件数が少ない段階では必須ではありません。ただし、収益が増えたり企業案件が増えたりすると取引管理が複雑になるため、早めに分けておくと後の記帳が楽になります。
なお、SNS収益が事業所得になるか雑所得になるかは、活動の規模や継続性など個々の実態によって判断が異なります。また、業務に係る雑所得についても、前々年の収入金額が300万円を超える場合には、現金預金取引等関係書類を5年間保存する必要があります。
Q. 屋号付き口座は必要ですか?
必須ではありません。個人名義の口座を事業専用として利用するだけでも、生活費と事業資金を分けられます。
Q. SNSごとに銀行口座を分ける必要はありますか?
基本的にはありません。YouTube用、Instagram用など複数の口座を作るより、事業用口座を1つに集約し、帳簿上で売上の種類を区別する方が管理しやすい場合があります。
Q. 事業用口座から生活費を引き出しても大丈夫ですか?
個人事業主であれば可能です。ただし、その引き出し自体を事業の経費にはせず、「事業主貸」などを使って帳簿上適切に処理します。
まとめ
インフルエンサーにとって事業用口座の開設は必須ではありませんが、SNS収益が継続的に発生しているなら、生活用口座と分けて管理するのがおすすめです。
口座を分けることで、売上や経費を把握しやすくなり、記帳や確定申告の負担も軽減できます。
特に、
「SNS収益を事業用口座に集める → 事業経費をそこから支払う → 必要な生活費を個人口座へ移す」
というルールを作ると、お金の流れがわかりやすくなります。
取引件数が少ないうちから管理方法を整えておけば、企業案件や広告収入が増えても慌てにくくなります。事業用口座は節税そのものを目的とするものではなく、正確な経理と資金管理をしやすくするための仕組みとして活用しましょう。
SNS収益の記帳やお金の管理が大変なら記帳代行アクリーを活用すべき?
SNSの収入源が増えると、事業用口座を作っただけでは経理作業そのものはなくなりません。
YouTubeの広告収入、企業案件、アフィリエイト報酬などを確認しながら、撮影機材、編集ソフト、外注費などの取引を記帳していく必要があります。
「発信活動に集中したい」「記帳を毎月後回しにしてしまう」「確定申告前にまとめて処理するのが大変」という場合は、記帳代行を活用する方法もあります。
記帳代行アクリーを利用して日々の記帳業務を外部に任せれば、コンテンツ制作やSNS運営など、本来取り組みたい仕事に時間を使いやすくなります。
事業用口座を分けておくことは、記帳を効率化する第一歩です。さらに経理業務を仕組み化することで、SNS収益が増えても管理しやすい事業環境を整えられるでしょう。


